普通じゃなくていいんじゃない?

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<<   作成日時 : 2016/02/11 18:38   >>

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 平成××年、大手居酒屋チェーン『ヒガシ』は、過去最高の売り上げを達成した。株主総会の席上で自身が行った経営上の努力や、今年度の利益目標について熱弁を振るう『ヒガシ』最高責任者 東義徳(あずま よしのり)の表情は自信と恍惚に満ちていた。
 『ヒガシ』は、今から約三十年前に、創業者の東潤三(あずま じゅんぞう)が都内で始めた同名の小さな料理店からスタートしている。潤三の作る料理は庶民的な味わいだった。彼個人の気さくな人柄も相まって、小料理屋『ヒガシ』は連日のように賑わっていた。そのうち、弟子という形で何年か修行を積んだ料理人が、『ヒガシ』二号店、三号店の店主になっていった。
 『ヒガシ』は地道な経営で着実に店舗数を増やしていった。質の高い料理と個性的な店主たちが作る温かみのある空間を大切にして、経営規模を性急に拡大しようとはしなかった。潤三自らが市場に出向いて魚介類を仕入れる、店主たちの飽くなき料理研究、そういった努力が実を結び、『ヒガシ』の経営は長く安定していた。
 しかし、都内に十ほど店舗を構えた頃、『ヒガシ』は逆境に立たされる。バブル崩壊後、長く続く不況の影響で、日本経済全体にデフレの風が吹いた。モノの値段は軒並み下落。飲食業界も例外ではなく、「一杯二百五十円の牛丼」や「一品三百円の居酒屋」が現れ、好況を呈した。一方、料理の質にこだわる『ヒガシ』は、他の居酒屋よりも高めの価格設定だった。そのため、懐の寒いサラリーマンたちの足は次第に『ヒガシ』から遠のいていった。結果、十あった店舗の半分を閉めることになった。当然、従業員も多く解雇せざるを得なかったが、店主やアルバイトたちの生活を大切にする潤三にとって、それは辛い決断だった。
 『ヒガシ』の不幸はまだ続く。傾く経営に対するプレッシャーや従業員の解雇に心労が溜まっていたのだろう。店主たちとの会議を終えて、家に帰ろうと車を運転していた潤三は、心臓発作を起こし、帰らぬ人となった。潤三の葬儀には、生前彼を慕っていた多くの人が訪れた。中には『ヒガシ』を解雇された元従業員の姿もあった。


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