普通じゃなくていいんじゃない?

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zoom RSS 彼女の電話

<<   作成日時 : 2016/03/05 22:56   >>

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 俺には、かわいい彼女がいる。付き合って一か月くらいになるだろうか。ドラックストアで働く彼女を見て一目惚れした。それから連絡先を渡したり、デートに誘ったり、色んな方法で猛アプローチした。そして、ラブレターを渡してから俺たちの交際が始まった。
 付き合いだしてから分かったことだが、俺と彼女の家は近い。俺のアパートと彼女のマンションは国道を挟んだ向かいにあり、窓から彼女の部屋が見える。仕事から帰ってすぐベッドにダイブしたり、テレビを見て大笑いしたり、料理しながら鼻歌を歌ったり、窓越しに見ても彼女はかわいい人だ。
 おっ、彼女の電話だ。俺は、テーブルの上にある見慣れた機械を手に取った。

「もしもし。」
《もしもし、ランちゃん。元気?》
「うーん、イマイチね。」
《どうしたの?》
「今日、レジ打ち間違えちゃって。計算合わせるの大変だった。」
《あー、それは災難だったね。》

「あなたの方はどう?」
《俺は今日仕事で、下らないミスして上司に怒られたよ。》
「そんな時間も大事だよね。」
《そうかな? ただしんどいだけだったけど。》

「あ、そういえば今日、妹から連絡があったの。『大学に合格したって』。」
《へー、よかったね。おめでとう!》
「ありがとう。だから、四月から東京に出てくるの。」
《それは、会ってみたいな。》
「うん、妹が落ち着いたら三人で会おう。」
《きっと君に似てかわいいんだろうなぁ。》
「見た目はよく似てるって言われる。でも性格は全然違うよ。妹はすっごいおしゃべりで、放っておくとずっと喋ってるの。」
《それは面白い。》
「うん、一緒にいて退屈はしないと思うよ。たぶん疲れるけど(笑)」
《ますます興味が出てきた。》

「あなたの弟さんは、最近どう?」
《えっ、俺に弟はいないけど…。》
「そっかぁ。大変だね。」
《それって大変なの?》
「でもそうやって関わろうとし続けるって大事だよ。」
《俺は何があってもランちゃんに関わり続けるよ。》

「…。」
《ランちゃん?》
「私、今日は、あれをしようと思うの?」
《あれって、何のこと?》
「ちょっと緊張するね。」

心なしか彼女の声が大きくなったようだ。

「それじゃ行くよ。せーの、」

  ああああああぁぁぁぁぁ!

 彼女の大声が耳に突き刺さった。俺は突然のことに驚き、受信機を一瞬、耳から離した。彼女はいったい何をしたんだ。

「ねぇ聞こえる? 私、あなたのこと知ってるよ。あなたはドラッグストアのお客さんで、帰り道、私の後を着いて来てた。郵便受けに毎日のように手紙を入れたり、ツイッターにコメントしたり、正直、気持ち悪かった。」

《ランちゃん、何を言ってるの?》

俺は、ドキドキして呼吸が荒くなるのを感じた。

「私が使ってる化粧品が袋に入ってドアノブにかかってたり、家に帰ると家具の位置が変わってたり、そんなことがあるたび、怖くて怖くて仕方なかった。でも、それももうおしまい。あなた、向かいのアパートに住んでて、私の部屋を見てたでしょ。それでこの機械がコンセントの裏に隠されてた。全部、警察に話したから。そろそろ、あなたの部屋に行く頃じゃないかしら?」

 俺は背筋に冷たい電気が走るのを感じた。同時に胸の内に黒い感情が沸き上がってきた。

《この、クソ女がぁぁ!》

 窓に向かってそう叫んだ次の瞬間、ピンポン! 鋭いチャイムが部屋中に響き渡った。俺は、彼女の部屋を盗聴していた受信機を思いっきり床に叩きつけた。それは真っ二つに分かれ、配線をむき出しにして何も喋らなくなった。俺はこんなに愛してるのに。彼女、電話の相手に騙されてるに違いない。彼女の家に行こう。
 しかし、玄関を飛び出したところで、俺は制服の男に取り押さえられた。

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