復讐のカルマ

 時刻は夜八時。住宅街の十字路で、俺は息を潜めていた。辺りは静かで通りかかる人はいない。奴の行動パターンは把握している。奴は毎日、家に帰るため、この十字路を横切る。来た。奴はスマホをいじりながら歩いている。  俺はポケットからナイフを取り出し、奴に駆け寄った。そして、握り手に渾身の力を込め、胸元を刺した。舞う鮮血が街灯に照らされて…
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老僧の墓穴

 人里離れた山奥に小さな寺があった。お堂はよく手入れされていたが、訪れる人がいないせいか、寂しげに佇んでいた。春を迎えた山はあちこちから生命の息吹が感じ取れた。暖かな日差しや緑に輝く草葉、木々を揺らす小さな生き物たちの営み。  お堂の裏で穴を掘る老僧は、その一つひとつを愛おしく思っていた。しかし、生命に対する愛情もまた、悟りを妨げ…
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糸人間の使命

 朝起きると、布団の脇に足が転がっているのに気づいた。右足と左足がセットである。見た目は非常に精巧で本物の足と見分けがつかないくらいだ。しかし、足首の断面から覗くと中が空洞でスカスカだった。  次の朝は足首から膝上まで、次の朝は太ももまで足が伸びていた。気味悪さを感じなかったわけではないが、友達のいない俺は誰に相談することもできな…
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ピアスホールの白い糸

「あの~、ピアスを開けた穴から白い糸が出て、それを抜くと失明するって聞いたんですけど、本当なんですか?」  白い壁にところどころくすみが目立つ診察室で、私は耳鼻科の先生に恐る恐る尋ねた。 「ああ。小林さん、その話、誰に聞いたんね?」 「えっと、お母さんにピアスの穴を開けたいって言った時に聞きました。」 答えを聞くと、…
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見えない子供の貧困 負の連鎖を食い止めろ! 後編

前の記事でNHKの特集番組を元に「見えない子供の貧困」について書きました。簡単にまとめると… ・相対的貧困家庭(月収20万円以下)の子供たちはスマホやゲームの所有率が高いため、貧困が外から見えにくいが、新しい服が買えない、塾や習い事に通えないなどの面でハンデを抱えている ・相対的貧困の子供は、「物の貧困」だけでなく、「人との繋が…
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見えない子供の貧困 負の連鎖を食い止めろ! 前編

「お父さんもお母さんも忙しくて大変そう。大人になるのは辛いことだから自分の将来が楽しみに思えない」 小学生の男の子が悲しい声色でインタビューに答えました。 これは「見えない子供の貧困」を取り上げたNHKの特集番組の一幕です。 今、日本の世帯の15.6%、およそ6世帯に1世帯が相対的貧困に陥っています。 <相対的貧…
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個性はピアノで作った曲?

先日、猿の研究者である河合雅雄さんが書いた「子どもと自然」という本を読みました。 内容は猿の生態学という視点から子育てを考えるもので、目からウロコのことが多く、とても面白かったです! その中に「遺伝子を学習という行為で操作して自分自身で作曲した曲、それが個性というものだ」と書いてありました。 人には誰しも才能という名のピアノが…
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「私はあなたを軽蔑しません。なぜなら…」

この前、仏教の本を読んでいた時に、法華経に常不軽菩薩という修行者が登場することを知りました。 この人は、誰に会っても「私はあなたを軽蔑しません。なぜなら、あなたはいつか必ず仏になる身ですから」と礼拝していました。 ところが彼はみんなに殴られたり、棒ではたかれたり、散々な目に遭います。 それでも常不軽菩薩は「私はあなたを決して軽んじ…
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信長・秀吉・家康に学ぶ人間の成熟 後編

さて、前編では信長・秀吉・家康の性格を表すとされる有名な句「鳴かぬなら ○○○○○ ホトトギス」を取り上げ、それぞれの欲求不満状況に対する対処法はそのまま人間の成熟段階に対応しているという話をしました。 一言で表すなら信長は攻撃、秀吉は行動、家康は忍耐といえるでしょう。 しかし、僕はまだその上に成熟段階があると思います。 信長…
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信長・秀吉・家康に学ぶ人間の成熟 前編

「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」 「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」 「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」 この3つの句は日本人なら誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? これはそれぞれ織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の性格を表す句だとされています。 これを習ったのは確か小学生の頃だったと思…
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マンション投資で億万長者? イエスと釈迦は何を思うか 後編

前の記事で、最近マンション投資で巨大な資産を築くサラリーマンが増えているという話をしました。 ここからは、投資によってお金を稼ぐことについて、イエスと釈迦は何を思うか真面目に考えてみます! ①イエスについて もちろんイエスは2000年前の人物ですから、マンション投資のことなんか分かりっこありません。 ですが、新約聖書にはイエ…
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マンション投資で億万長者? イエスと釈迦は何を思うか 前編

久しぶりの記事更新です! 今年は本当に色々なことがあって、例えば臨床心理士指定大学院への挑戦(ダメだったけど…)、転職等々、やっと落ち着いた時間が取れたので、最近見たTV番組を導入にイエスと釈迦のことを考えてみます。 先日、NHKのクローズアップ現代でお金についての特集が組まれていました。 中でも印象的だったのは、不動産投資に…
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少年と男

 ガタンゴトン、ガタンゴトン、プシュー。男の背後で一台の電車が止まった。客はほとんど乗っておらず、この駅で乗り降りする人もまばらだった。男が乗る予定の急行電車が来るまであと二分ある。しかし男は向きを変え、背後の電車に飛び乗った。自分でもどうしてそんな行動を取ったか分からない。頭の中は真っ白だった。  ガラガラの座席に腰かけた男は弾んだ…
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夏の幻

  チリンチリーン。  気が付くと俺は、神社の入り口に立っていた。今は夏祭りの真っ最中で、本堂へ向かう一本道の脇には、所狭しと露店が並んでいた。 「ねぇ、このお店、いっぱい風鈴売ってるよ。あ、これかわいい!」  そう言って、隣で目を輝かせている浴衣姿の女の子は…、結衣ちゃん! 俺は心臓の鼓動が一気に高鳴るのを感じた。 …
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タカシの一生

「郵便でーす!」  俺は配達員から荷物を受け取った。荷物には、差出人の名前がなく、俺の住所だけが印字されていた。茶色の紙に包まれた薄くて平たいそれを開けると中には、梱包材に包まれたDVDが二枚入っていた。それは、何の変哲もない白ラベルのDVDだったが、表面に書かれたタイトルを見たとき、俺はドキッとした。 『タカシの一生 vol.…
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彼女の電話

 俺には、かわいい彼女がいる。付き合って一か月くらいになるだろうか。ドラックストアで働く彼女を見て一目惚れした。それから連絡先を渡したり、デートに誘ったり、色んな方法で猛アプローチした。そして、ラブレターを渡してから俺たちの交際が始まった。  付き合いだしてから分かったことだが、俺と彼女の家は近い。俺のアパートと彼女のマンションは国道…
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イデアの影

「自然界のすべての現象は永遠の型、つまりイデアのただの影だ。美しきイデア界から来た我々の魂は、望郷の念、すなわちエロスを忘れずにはいられない」  寝室のベッドに寝転びながら、哲学の入門書をパラパラめくっていた。今読んでいたのは、プラトンの項目だ。その本は、もうずいぶん前に一度読んでいたし、特に目新しい発見があるわけでもない。ただ、…
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新・奇怪な世界

 突然、それまでの狭い暗闇に亀裂が入り、光が差し込んだ。あまりのまぶしさに何も見ることができない。私は恐怖のあまり泣き叫んだが、周囲の人々は声を出して笑った。  口に柔らかな突起物を差し込まれ、粘性のある液体が注ぎ込まれる。不思議と嫌な感じはしない。それは誰かに強制された? いや、私が望んだことだ。  力ずくで下着をはぎ取られ、…
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セツさん

「在原先生、急患です!」  そう言って看護師が俺のデスクにやってきたのは、昼食を終えて午後の仕事を前に一服している時だった。 「患者の状況は?」 知らせに来たのは救急科に配属されて間もない看護師で、慣れない急患に戸惑っている様子だった。俺は、彼女と対照的に、朝食のメニューでも聞くかのように冷静な口調で尋ねた。 「あ、はい。患…
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頑固な二人

「お前の顔なんか二度と見たくない。出て行け!」  そう言って、家を追い出されたのはもう何年前のことだろう。人気お笑いコンビ『ペンケトー』のボケ担当 進藤イタル(本名:飯塚大志)は、父親の墓の前で遠い過去の記憶を浮かべていた。  大志が生まれたのは北海道東部の田舎町だ。山と森に囲まれた穏やかな町で彼は育った。小さな頃は引っ込み思案で、…
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