普通じゃなくていいんじゃない?

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zoom RSS コヒガシ 結

<<   作成日時 : 2016/02/11 18:51   >>

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   結

 職を失った義徳の生活はすぐに困窮していった。経営者として大量の報酬を受け取っていた義徳は、収入が途絶えても、生活水準を下げることができなかった。そのため、大量にあった貯金はあっという間に底をつき、高級外車やタワーマンションも手放した。同時に奥さんにも愛想を尽かされ、出て行かれた。金もなく、独りになった義徳は仕方なく仕事を探し始めた。義徳は、会社の管理や経営に携わる職を探したが、ブラック企業の経営者として悪名高い彼を雇おうとする企業はどこにもなかった。さりとて、プライドの高い義徳は、誰でもできるアルバイトなどする気も起きなかった。
 そのため、彼は消費者金融からの借金で生活するようになった。多重債務に陥り、闇金にも手を出した。「いずれどこかの企業で経営者でもやれば、借金などすぐに返せる」と甘く考えていた義徳だったが闇金の取り立ては厳しかった。連日、携帯電話に何度も着信が入り、自宅には取り立て屋が来た。彼らは、義徳の母がいる実家にも行って圧力をかけた。次第に義徳は精神に不調をきたすようになった。そして、「夜逃げか自殺か」というほど追い込まれたとき、ある企業が義徳を経営者の一人として迎えたいと申し出てきた。
 その企業とは、かつて彼を追い出した『ヒガシ』であった。義徳がいなくなった後の『ヒガシ』は、岡島が代表に就任し、百八十度経営方針を転換していた。安いだけでなく、質の良い料理の提供と堅実な経営戦略、働きやすい労働環境の実現。東京高裁で係争中だった「新入社員過労自殺事件」は打ち切り、賠償金を支払って遺族と和解するとともに、元従業員、有川美穂の自殺について全面的に責任を認めた。賃金の向上、適正な労働時間の管理、洗脳的研修の撤廃…。こうした取り組みが効果を上げるには長い時間がかかるだろう。一度世間に染み付いたイメージを変えるのは容易なことでない。
 岡島は、義徳の復帰に一つだけ条件を付けた。それは「『コヒガシ』で一年間、ワンオペ勤務を経験すること」だった。義徳は絶句した。かつて虐げられていたときの仕返しではないかと、岡島に怒りが沸いた。しかし、義徳はその条件を飲んだ。借金まみれの悲惨な状況から抜け出すために、藁をもすがる思いだった。すぐに『ヒガシ』は義徳に自己破産させ、借金を整理した。
 その後、『コヒガシ』で働き始めた義徳は世間の人々から忘れられていった。『コヒガシ』の常連客によれば、彼は「テキパキ動き、あまり笑わない」そうだ。多くの労働者を使い潰してきた元ブラック企業経営者は、過酷な現場労働の世界に身を投じ、今何を思うのだろう。


(完)

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