テーマ:内心

ダイブ57

五十六からの続き    五十七  千佳子が姿を消してから一週間が経った。高野は思いつく限り様々な手段を使って千佳子を探したが全く手掛かりが見つけられずにいた。相変わらず携帯は繋がらず、メールは届かない。記憶の中から千佳子の地元に関する情報がないか必死に考えたが何も思いつかない。北海道の地図を見ても、あまりに広くて目星さえ…
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ダイブ56

五十五からの続き    五十六  「こんばんは!」 明るい声でホテルの一室に入ってきたのは、すらっとして背の高い女性だった。容姿はかわいいというより綺麗で頼れるお姉さんという雰囲気だ。年齢は二十代半ばか自分と同じくらいだろう。  「はじめまして。ゆずです。ご指名ありがとうございます!」  ゆずは千佳子が親しくしてい…
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ダイブ55

五十四からの続き    五十五  「国中市役所」 郵便受けの封筒に書かれた印字を見たとき、高野は心臓が跳ね上がる思いがした。いよいよ来た。封筒には採用試験の結果通知が入っているのだろう。それで、俺と千佳子の未来が決まる。高野は震える指先で封を開け、中の紙を取り出した。  「あなたは、平成○○年度国中市職員採用試験の第…
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ダイブ54

五十三からの続き    五十四  リビングルームは重苦しい雰囲気に包まれていた。長テーブルを囲む三人、高野、美佐、そして父親の真一は無言で向かい合っていた。  「類、お前いったい、二百五十万もの大金を何に使ったんだ?」 沈黙を破ったのは真一だった。  「母さんから聞いてないの? 公務員予備校の費用だよ。」  「予…
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ダイブ53

五十二からの続き    五十三  「ねぇ、ちこちゃん。話があるんだ。」 その日勤務のなかった千佳子は、高野の家に遊びに来ていた。昼食を食べて二人でのんびり過ごしている時に、高野が切り出した。  「どうしたの、突然?」  「実は…。二百五十万円、手に入りました!」  「はっ、えっ、類くん、冗談でしょ!」  「冗談…
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ダイブ52

五十一からの続き    五十二  「北海道まで行ってきたんだ! すごいね!」 そう言って美佐は目を細めた。久しぶりに実家に戻った高野は、母に近況など伝えながら、北海道旅行の話を聞かせた。途中美佐に「誰と行って来たの?」と聞かれたので、高野は「大学時代の友達とだよ。」と適当にうそぶいた。話がひと段落したところで、美佐にお…
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ダイブ51

五十からの続き    五十一  北海道旅行最終日。高野と千佳子はお昼前の飛行機で東京に向けて旅立った。午前中は空港でお土産を選んだ。千佳子はデリヘルで働く同僚のゆずに北海道の地ビールを、高野はある考えがあって、有名メーカーのお菓子詰め合わせをそれぞれ購入した。  旅の終わりは実にあっけなかった。空港から飛び立った飛行機…
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ダイブ50

四十九からの続き    五十  札幌駅を出発した快速列車が海沿いの線路をまっすぐに走っていく。風が強く、波が白い牙をむき出しにして、岸壁の岩場に襲い掛かっている。その様は、青春時代の反抗期に似ている。彼らは容易に打ち砕かれ、自らの無力を悟る。しかし、それは時に大きなうねりとなり、多くの人間の運命を変える。  高野には、…
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ダイブ49

四十八からの続き    四十九  「ここが南六西七で、あっちが南六西六だから、こっちが東か?」  すすきのの街中で高野は道に迷っていた。札幌は京都の街並みに習い、碁盤の目状に区画整理されている。住所は大通公園の東端を基準に、そこから北に二区画、西に三区画進むと「北二西三」というように定められている。そのため初めて訪れた…
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ダイブ48

四十七からの続き    四十八  午前九時。高野がホテルで目を覚ますと、すでに千佳子の姿はなかった。この日、千佳子は地元に帰って家族や友人と会うため、高野とは別行動をする予定になっていた。高野は、「一緒に行きたい」と言ったが、「家族に会わせるのは照れくさいから」と断られていた。  テーブルの上に昨日はなかったメモ用紙が…
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ダイブ47

四十六からの続き    四十七  極楽通りを抜けて少し歩くと、「地獄谷」と書かれた看板があった。通りから右に入ると、すぐに茶色い山肌が目に入ってきた。昔、崖崩れでもあったのだろうか、濃淡のある地層がむき出しになっていた。柵で囲われた通路と山の間には、白くいびつな形をした斜面が広がっていた。所々から煙が上り、硫黄の匂いがツ…
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ダイブ46

四十五からの続き    四十六  新千歳空港を出発したバスは、見渡す限り続く深い森の国道を走った。沿道に生える木々の多くはすっかり葉を落とし、厳しい冬を迎える準備をしていた。その中に関東では見かけない白樺の木がまばらに混ざっていた。(遠くに来たんだな)。車窓を流れる異国のような景色を眺めながら高野は思った。空港まではしゃ…
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ダイブ45

四十四からの続き    四十五   「ちこちゃん、急いで、もう時間過ぎてるよ!」   「待って、そんなに早く走れないよ!」  高野と千佳子は、成田空港の通路を全力で駆け抜けていた。たくさんの荷物を抱えながらのそれは、身体に大きな負担を掛けていた。二人とも息が上がり、腕も足も痛かった。しかし、ここで飛行機に乗りそび…
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ダイブ44

四十三からの続き    四十四 「受験番号七十八番、高野類です。よろしくお願いします!」  国中市役所の会議室で、高野は三人の面接官を前にしていた。国中市職員採用二次試験。この試験に合格すれば、高野は来年四月から国中市職員になる。今後の千佳子との生活のために何としてもこの面接をパスしたい。高野は必死だった。   「…
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ダイブ43

四十二からの続き    四十三  高野はバイトの後、千佳子の家に行った。千佳子はカレーを作って待っていた。彼女のカレーにはいつも色々な具材が入っているが、今回も豆腐や大根、エリンギなど盛り沢山で食べごたえがある。疲れた高野には、彼女の優しさがありがたかった。  ところが、二人は喧嘩した。思い出すのも難しいような些細なき…
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ダイブ42

四十一からの続き    四十二 「お前らホント不自由だな。障害者だろ!」  背の低い筋肉質の男性が、鉄骨パイプを持ち上げようとする数人の男性に向かって、怒声を発した。だだっ広い体育館のいたるところで、男たちが作業を進めていた。全体で百人より少し多いくらいだろうか。この場所では、明日人気アイドルグループのライブが行われる…
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ダイブ41

四十からの続き    四十一  高野は国中市内の図書館に来ていた。次の面接試験に備え、志望動機を固めるためだ。資料によれば、国中市は交通の要衝として古くから栄えていたらしい。関東各地から物資が集まり、商業が盛んで宿場町として発展した。大正時代には鉄道が敷かれ、戦時中には大きな基地が作られた。戦後は宅地開発が進み、工業都市…
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ダイブ40

三十九からの続き    四十  十月某日。高野の元に一通の封筒が届いた。差出人は「国中市総務部職員採用課」とある。来たな、と高野は思った。封を開けると中には折り畳まれた紙が数枚入っていた。一番上の一枚を広げてみると、 「あなたは、平成○○年度国中市職員採用試験の第一次試験に合格しました。」 と書かれてあった。「やった…
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ダイブ39

三十八からの続き    三十九  それからも二人は逢瀬を重ねた。どちらもインドア派だったので、お互いの家を行き来することが多かった。そして一緒にゲームしたり、映画を見たり、漫画を読んだり。日がな一日ゴロゴロしたり、抱き合ったり。千佳子はよく手料理を作った。レシピを見て緻密に、というよりアレンジを加えて適当に、が多い彼女の…
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ダイブ38

三十七からの続き    三十八  深夜一時。シャワーを浴びて、そろそろ寝ようかと考えていた高野の携帯に着信が入った。相手は千佳子だ。高野は、今日の昼間やたら不機嫌で部屋を出て行った彼女の様子を思い出した。いったい何の用だろう。 「もしもし…。」 「もしもし類くん。今すぐうちに来て欲しいんだけど!」 「えっ、ちょっと…
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ダイブ37

三十六からの続き    三十七  類。高野は昔から自分の名前が好きじゃなかった。話は小学校時代の苦い記憶に遡る。 「おーい、爬虫類。悔しかったら舌伸ばして取ってみろよ!」 そう言って幼い日の高野をからかうのは、お調子者の秋山だ。次の授業は体育だが、秋山は高野の体操袋から紅白帽を奪って取り巻き連中とパスし合い、高野を困…
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ダイブ36

三十五からの続き    三十六  最寄駅の広場では、今日も何組かの青年たちが音楽を演奏していた。しかし、その中に翔馬の姿はなかった。頻繁に辺りを見渡していたためだろう、千佳子に「どうしたの?」と尋ねられた。 「いつもここで歌ってた翔さんを、最近見かけないんだ。」 高野は答えた。 「私もその人に会ってみたかったな。」…
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ダイブ35

三十四からの続き    三十五 「チキンカレー、十辛お願いします!」  『神楽』は都内にあるスープカレー専門店だ。本場札幌で修行した店主が作るスープカレーはスパイスが効いた中にも深い味わいがあり、口コミで人気が出た。店内にはアイヌの民芸品が飾られ、異世界に来たような独特の雰囲気がある。  高野は、千佳子を食事に誘った…
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ダイブ34

三十三からの続き    三十四  午前八時三十分。高野が国中市職員採用試験の会場である八雲大学の講義室に入った時、すでに四分の三ほどの席が埋まっていた。ここには百名を越える受験生がいるが、参考書のページをめくる音がする以外、不気味なほど静まり返っていた。受験番号七十八番。高野は黒板に張られた座席表を見て自分の席に座った。…
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ダイブ33

三十二からの続き    三十三 「ご飯できたよー。食べに来て!」  一階のリビングから母親の呼ぶ声が聞こえた。久しぶりに実家に戻っていた高野は読みかけの漫画を閉じて立ち上がった。高野の部屋は、彼が高校を卒業してこの家を出る頃と変わらぬ状態で保存されていた。木製のやたらに広い学習机とその上に並んだ受験用参考書。机の脇には…
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ダイブ32

三十一からの続き    三十二 「へー、けっこう綺麗にしてるんだね!」  高野の部屋を見た「ななみ」が感想を口にした。今回、高野はホテル代を節約するため、「ななみ」を自分の部屋に呼ぶことにした。しかし高野の部屋は派手に散らかっていたため、彼は今朝から必死に片付けをした。とはいえ、床に落ちている物を片っ端から押し入れに放…
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ダイブ31

三十からの続き    三十一  カチッ、カチッ、カチカチッ。  歩道を歩く人々を横目で見ながら、高野は手元のカウンターをテンポよく鳴らした。休日のビジネス街は閑散としていて、人気がまばらだった。 (この場所でラッキーだったな。) 交通量調査のバイトで、歩道の隅に置かれたパイプ椅子に座る高野は思った。  交通量調査…
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ダイブ30

二十九からの続き    三十 「こんばんは。あっ、この前のお兄さん!」  初めてデリヘルで本番をした三日後、高野は同じホテルの同じ部屋に「ななみ」を呼んだ。ここ数日、高野はDVDを見たり、街をうろついたりしていたが、なんとなく「ななみ」のことが気になっていた。久しぶりにゲーム機を取り出し、『ストーリーオブシンフォニー』…
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ダイブ29

二十八からの続き    二十九   「ななみちゃんは普段、家で何して過ごしてるの?」   「うーん、ゲームしてることが多いです。」   「へー、どんなゲーム?」   「『ストーリー』シリーズって知ってますか?」   「知ってるよ。俺、めっちゃやったもん!」   「えー、本当ですか!」   「うん。『ストーリー…
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ダイブ28

二十七からの続き    二十八 「はい、予約です。…。ななみちゃんで。…。えっと、六十分コースをお願いします。…。名前ですか。岡野です。…。今からですか。だいたい十五分くらいでホテルに入ります。…。分かりました。」  今日は月に一度の仕送り日だ。テンダーでのバイトを辞めた後、金の無心をした結果、今月は母親から口座に八万…
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